小説:お盆と家族と不動産と
第五十三話~入居日~

入居日だからって、家主・ミチコが行く必要はない。 ただ、おそらくは今後の数年間、見ることはないであろう実家を、そして思い出をこの目に焼き付けておきたかった。 到着すると、忙しそうに荷物の搬入が行われていた。 滞在時間はほ […]

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第五十二話~日は流れ~

11月になり、季節は、すっかり秋めいてきた。 朝夕の寒さが日に日に厳しさを増す。 ミチコは久々に車を田舎へ走らせた。 慣れない高速道路を2時間かけて。 今日は、実家を借りてくれた社会福祉法人の入居日。 父ちゃん母ちゃん、 […]

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第五十一話~フェードアウト~

マサカズは続ける「やっぱり、この家を社会福祉法人とやらに貸す分の家賃をミチコがもらうのが一番いいよね。 そうだ、この際だからここの土地と建物の名義をミチコにしたらいい。 山とかが売れた分で一時的な収入があるより、継続的に […]

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第五十話~GIFT~

その後、ミチコの視線は兄マサカズへ。 5秒、10秒と沈黙が流れる。 そして口を開いたのはマサカズ。 「うん。それでいい!で、あとは3人でどう分けるか…。 そうだな…やっぱりミチコがこっちにいて父ちゃん母ちゃんの面倒も見て […]

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第四十九話~ミチコの大発表~

この約1年間の汗と涙を思い出しつつ、これで得たお金で買おうと思っている新車の軽とカーナビとそこから流れるミスチルを頭の片隅に思い描きながら、ミチコの大発表。 マサカズとユウイチは特に口を挟むことなく、ただただ時に頷く。 […]

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第四十七話~言ったし~

「いるんなら、いるって言ってよ!」と弟ユウイチが声をかけてもミチコはややうつむき黙ったまま。 何かを察した2人は静かに畳の上にあぐらをかいた。 と、その時、ふとミチコが顔を上げ、「あら、帰ってきてたの!ただいまぐらい言っ […]

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第四十八話~発表します~

ミチコは天井を見上げ、その後に後ろを振り返って仏壇を見つめる。 そして、「ケンイチー、ケンイチー」とわが子を呼ぶ。 トイレから流水音といっしょにTシャツ、短パン姿のケンイチが。 「おっ!帰ってきてたの!久しぶりじゃん!」 […]

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第四十六話~いた~

いつもなら車の音に気付き、他の誰よりも一番早く、誰より明るく出迎えてくれるミチコが…いない。 まぁ手料理でも作っているのだろうと思い、「ただいまー」「おーい」と玄関から入る2人。 が、誰の返事もない。家の中に入ると、6帖 […]

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第四十五話~兄弟の帰郷~

ついこの前までは生い茂っていた庭の草木はきれいに刈り取られ、1年前の台風でできた天井の雨染みはその天井板が張り替えられ真新しくなっていた。 35℃を照らし続ける太陽がちょうど真上にさしかかった頃、1台の「わ」ナンバーが入 […]

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第四十四話~サルスベリ~

こちらも詳しくは会って話をしたいとのことであったが、内容はミチコの期待通り、いや期待を超えるほどのいい話であった。 畑はその全部を、とある農業法人が買いたいとのこと。 家の方は、とある社会福祉法人が借りたいとのこと。 そ […]

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