ちょうど1年前の夏、ミチコはこの不動産の1つ古びた空き家に行った。

いや行く必要があった。

自宅から慣れない高速道路を2時間走らせ、静かな山あいにある古びた空き家に。

ミチコの予想は当たった。

建物こそビクともしていなかったが、数枚の落ちた瓦、目で見てわかる瓦のズレ。

そう、台風に後、自分が若きを育ったこの家が気になったのだ。

家の中に入ると、あちこちに雨漏り。

「あ~、これもそろそろ寿命か…」

そう思った。

育った、いや育てられたこの家。

居間の柱には、兄弟3人の成長の跡が。

それは兄弟3人の背の高さを刻む無数の線と、その時の年齢。

一番下に「ミチコ5才」って刻んでいる。今のミチコの膝より少し高いところに。

一番上には「マサカズ18才」。

こっちは今のミチコより高いところに刻まれている。

思い出は絶えない。

…が、思い出に浸っていると、ミチコの額にポタッと何かが。

そう、雨漏りの滴。

続く…。

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